医学部を受験する際には自分に合った制度を利用することで、学費の工面がしやすくなるなどさまざまなメリットがあります。本記事では、医学部受験における地域枠制度について詳しく解説します。
医学部に設けられている地域枠制度は、医師の偏在を解消することを目的として導入されている制度です。2010年より導入されており、大学が指定された地域や診療科で診療することを条件に、各都道府県の自治体や大学が奨学金を貸与してくれます。都道府県が定めた地域で一定の期間診療に従事することで、奨学金の返還義務がなくなる点が特徴です(一部例外があります)。
ただし、必ずしも奨学金が貸与されるわけではなく、地域によって制度の内容はさまざまです。奨学金が貸与されない地域枠制度では、一般選抜よりも入学しやすくしているなどのケースもあります。逆に、奨学金が貸与される制度では、地域によって一般選抜よりも偏差値が高くなっているところもあるので難易度が高くなっている点に注意が必要です。
自治体や大学が採用している制度内容によって異なりますが、奨学金の貸与を受けることができ、指定された地域で一定期間診療に従事することで、奨学金の返済義務がなくなれば、学費を大きく抑えられます。
例えば杏林大学の場合、東京都地域枠を利用して医学部に入学した際、3,700万円の奨学金に加えて、生活費として月額10万円の貸与を受けられます。卒業後、「⼩児医療、周産期医療、救急医療、へき地医療のいずれかの領域で、医師として、東京都が指定する医療機関に奨学⾦貸与期間の1.5倍の期間、従事すること」とされている条件を満たせば、これらの返済義務がなくなるのです(※)。これはとても大きなメリットだといえます。
医学部の倍率は上昇傾向にあるといわれていますが、地域枠は一般選抜よりも競争率が低く、入学しやすいです。地域枠が定員割れしている大学もあるようですので、入学に有利だといえます。
地域枠制度は医師の偏在を解消することを目的としているため、卒業後は定められた地域で一定期間医師として勤務しなければなりません。自治体によっては診療科の制限を設けているところもあるため、自分の目指す診療科に進めない可能性がある点はデメリットだといえます。
どうしても目指したい診療科がある場合は、地域枠制度を利用してその診療科に進めるかを確認したうえで利用することが望ましいです。
地域枠制度で定められた期間を満たさずに、地域での診療を辞めてしまう場合、貸与された奨学金の一括返済が求められます。医学部卒業までにはかなりの学費がかかりますので、それを一括返済するのは簡単なことではありません。
また、途中離脱を防ぐために、利子を含めた一括返済を義務付けているケースもあるため、結婚や出産などの理由で離脱せざるを得ない場合も、かなり大きなリスクを背負うことになります。
医学部受験を目指す人にとって、地域枠制度には大きなメリットがあります。対してデメリットもありますので、将来進みたい方向性やライフプランなどを考慮したうえで利用を検討することが重要です。
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