医学部受験の2次試験で立ち向かうことになる面接と小論文は、医師としての適性や思考、人間性などを総合的に判断され、医学部合格を左右するほど重要な科目といわれています。学力アップに力を注いでおろそかにせず、早期のうちからしっかりと対策をとっておきましょう。
医学部受験には筆記試験だけでなく、面接審査が行われます。
特に面接は医学部合格を左右するといってもいいほど、近年非常に重要視されています。
というのも医師を志す者は常に勉強を続けて研鑽を重ね、患者と真摯に向き合う人間性とコミュニケーション能力が求められるからです。
受験時の学力だけでなく、勉強することが好きかどうか、医学についてどんな考え方を持っているのか、自分の思考を確実に伝えることができるのかといった能力が試されるのが、医学部受験の面接なのです。
面接次第では補欠の繰り上げが行われるケースもあるため、決して甘くみてはいけません。
受験生は学力アップに必死になるあまり面接対策を後回しにしがちですが、付け焼き刃で対応できることではないため、日頃から自分の考えをしっかりとまとめ、言葉にして相手に伝える訓練が必要です。
入試直前ほど不得意科目の強化に時間を取られてしまうので、面接対策は春から始めておくのが重要です。
大学によって、個人面接やグループ面接、複数名の討論形式で行われる面接など、さまざまなパターンがあります。
志望校で行われる面接形式を事前に確認して対策を練っておきましょう。
具体的な点数化について公開している大学はほとんどないため、医師としての適性や社会適応力、勉学意欲、人柄など、医師として適切な人物かどうかを総合的な観点から評価されます。
例えば、医師不足や医療ミスについてといった医学にまつわる質問もあれば、医学に全く関係ない社会問題や友人関係などについて質問されることもあり、大学ごとの対策は不可欠です。
医学予備校では面接対策の講義を行う学校も多いので、繰り返しトレーニングを積んで、本番にしっかりと自分の思いが伝わるように準備しておきましょう。
面接では耳障りのいいフレーズや定型の発言をするより、素直に自分の考えを発言するほうが好感を持たれます。
面接官は現役医師や医学研究者がつとめることが多いため、志願者が自分の言葉で話しているかどうかはすぐにわかってしまいます。
医学部の面接において、最も重要な質問と言えるのが「医師への」志望動機です。特に医学部面接では「医師になっても問題がないかどうか」がチェックされます。当然ですが給与が良いから、かっこいいから、偏差値が高いから、親が医師だからなどの理由は本当だとしても避けた方が無難です。
もし本当に医師である親に憧れて医師を目指す場合には、具体的にどのような点に憧れているのかを論理的に説明してください。医師の志望動機で重要な点は具体的な将来ビジョンを持っているか否かです。将来像や医師の責任をリアルにイメージしているかが問われていると考えましょう。医師は人の命を奪いかねない重要な職業。受験生が医師という仕事の責任から逃げずに、やっていけるか否か、医師という職業に対する熱意が面接で見られます。
医学部面接では、医療ニュースなど医療や衛生に関する社会情勢に目を向けているかもチェックされます。よくあるのは「最近気になった医療ニュースは?」という質問。あるいは「最近話題になった○○のニュースに関してどう思うか」等の形で聞かれることもあります。自ら話題を選べるか、という点では違いますが、その対策はどちらも同じ。医療に関連する時事問題について普段から関心を示すこと、広い視点でものを考えることだけです。特に短絡的に考えると極端な考え方に陥りやすくなりますので、それに関わる様々な人の視点に立ってものを考えなければなりません。
また、医学部だからと言って問われるのは医療ニュースだけと限らないのも怖いところ。可能であれば一般的なテーマにも関心を寄せていた方が良いでしょう。
また、面接官は医療系のプロフェッショナルであることも忘れてはいけません。分からないことは無理に知ったように語るのではなく、分からないことは分からないと正直に答えるようにしてください。また、脳死や保険制度、出生前診断など、ハッキリとした答えのないケースも多々あります。しっかり自分のスタンスを持っているかが大切です。普段から日ごろのニュースなど様々な問題について、深く考えるようにしましょう。
MMIとはマルチプル・ミニ・インタビューの略で、与えられたテーマに対するそれぞれの理解力や意見を説明する力を試す面接です。基本的に、まずは規定のシチュエーションの書かれた文章を読み上げてもらい、その状況を自分がどう捉えるのか、どのように対処するのかを考えてもらいます。そして、その内容を面接官に規定の時間以内にプレゼンするといった流れです。これを何度も繰り返すことで思考力や考え方、知識量、倫理面などをチェックします。
ただし、このMMIを採用している大学は決して多くはありません。今後、増加するかどうかもハッキリわからないのが実情です。自分の意見を伝えるのが苦手だから、MMIを採用している大学を避けると言ったケースもありますが、実際は自己PRをさせる大学がやや増加しているため、なんらかの形で自己表現は求められるでしょう。
面接と同様に、合否を分ける重要な要素となるのが小論文です。面接と小論文はセットで実施されることが多く、自分の思考をまとめて伝えるという意味では共通する部分が多いため、セットで対策するのが一般的です。
小論文の規定字数は大学によってまちまちですが、およそ600字~800字です。出題されるテーマは、与えられた課題文を読んだうえで自分の考えを論述する「課題文型」と、所定のテーマについて自由に論述する「テーマ型」に大別できますが、さらにその中でも図表を読み解く必要があるパターン、課題文が英文で出題されるパターン、課題文型とテーマ型が組み合わさったパターンなど、いくつかのバリエーションが考えられます。
こういった小論文の出題形式については大学によって傾向があるため、過去問をこなすことによって対策可能です。志望校が決まったら、できるだけ早い内に志望校の傾向を踏まえた小論文対策を行っていきましょう。
種類 | 内容 | 備考 | |
---|---|---|---|
課題文読解型1 | 課題文型 | 日本語の課題文を読んだ後に、テーマの指定を受けて論述。 | |
課題文読解型2 | 課題文型 | 日本語の課題文を読んだ後に、要約や説明をしたうえで意見論述。 | 設問は複数となる |
図表分析型 | 課題文型 | 課題資料にグラフ・表が記載され、これを読み解きながらテーマに沿った意見論述。 | 医療・自然科学分野からの統計が用いられるケースが多い。 |
テーマ型 | テーマ型 | 課題文や課題資料はなく、指定されたテーマから自分の意見を論述する。 | |
英文問題 | 課題文型 | 英文の課題文を読んだうえで日本語での意見論述。 | 大学によって要約や説明をくわえるケースあり。 |
理科論述型 | その他 | 理数4教科からの総合問題について論述を行う。 |
小論文の評価においては、「論理性があること」、「問題の趣旨に合致していること」の2点が何より重視されます。
論理性のない支離滅裂な内容では当然高評価は望めませんし、またどんなに論理的な内容であっても出題の意図にそぐわない論旨であれば採点対象とならないため、この2点はどちらも欠くことはできません。
逆に言えば、論理性があって問題の趣旨に合致した内容であれば、意見内容の細かな部分はそれほど重要ではありません。
結論が非常識なものでない限り、安定して高得点を狙えることでしょう。
国公立大医学部の小論文試験においては、英文の課題文を読ませるタイプの出題が増えてきています。
論じられるテーマも、医学のあり方や医療者の倫理をめぐる問題だけでなく、自然科学を題材とした専門性の高い問題や、生物学や化学の知識を活用しながら表やグラフを読み解いていく問題もあり、非常に多彩な出題内容となっています。
制限時間内にすばやく英文の論旨を読み取るための英文読解力が必要となるのはもちろんのこと、各種の専門的な話題に幅広く対応するための知識力も問われるため、国公立大小論文に特化した対策が必要となるでしょう。
医療ミスの隠蔽、尊厳死の是非、出生前診断、チーム医療でのコミュニケーション問題など、医療現場を取り巻く倫理的課題は年々重みを増していく一方です。
一人の医師の間違った判断が大きな社会問題に発展する例も少なくありません。
近年のこうした社会環境の中、どの大学も「医師にふさわしい人間性を備えた学生」を受け入れたいと考え始めています。
一次の学科試験では学力しか評価することができないため、必然的に二次試験において重点的に医師適性が評価されることとなります。
小論文の出題も、医師としてのバランス感覚や倫理観を問うような内容が近年の主流です。
医学部受験においてはどうしても学科対策に大きく時間を取られるため、二次試験対策はできるだけ短期間で効率的にこなしていくのが理想です。
小論文は出題の読解力・文章力・論理構成力・知識など複合的な能力が必要とされるうえ、自分の書いた文章を自分で評価するのは困難を極めるため、自己学習ではカバーが難しい分野となります。
医学部予備校では小論文対策向けのコースや講座が設けられていることが多いため、これらを活用して対策していくと良いでしょう。