医学部受験の面接では、集団面接・集団討論といった形式の試験が良く行われます。
「1対1で行われる面接より楽なのでは?」と思われがちですが、実は集団には集団の難しさがあり、ぶっつけ本番ではとてもうまくこなせないはずです。
高評価を得て無事に合格につなげるためには、基本的テクニックをおさえておく必要があります。
集団面接では複数の受験生と一緒に面接を受けることとなります。
面接で聞かれる内容は、医師を目指した理由や、理想の医師像、自己PRなど、通常の1対1の面接とそう大きく変わることはありません。
ただし、他の受験生の受け答えを聞きながらの面接となるため、比較されていることにプレッシャーを感じたり、自分が言うつもりのことを前の人に先に言われてしまってパニックに陥ったりといった集団面接ならではの難点もあります。
集団面接では、絶対に答えがかぶってはいけないというルールはありません。
焦らず落ち着いて、自分の準備してきた通りにやり遂げることが一番のコツと言えるでしょう。
集団討論では、受験生は複数人のグループとなってひとつのテーマについて討論します。
制限時間は30分~60分程度設けられるのが一般的です。
司会役を試験官が行うか、受験生の中から希望者が行うか、最後にグループの結論を必ず出すのかどうか、最後に結論の発表をするのかどうかといった細かいルールはその時々によって異なりますので、試験官の指示を良く聞いて臨機応変に対処しなくてはなりません。
また、集団討論は一人ひとりのコミュニケーション能力だけが評価されるのではなく、グループの討論全体の流れも評価されます。
誰か1人が暴走して発言しすぎたり、反対に緊張して黙り込む人がいたりすると、有意義な討論とは言えないためグループ全員の評価が下がってしまいます。
グループ全体での協調と自分の能力のアピールをバランス良く両立させなくては、集団討論で良い結果を残すことはできません。
「理系学生を増やすにはどうしたら良いか」といった自由なテーマが出されることもあります。
医学とは直接関係がないように思えるテーマですが、どんな話題でも積極的に考え、アイディアを出せるか、論理的に思考できるかといった点が評価されています。
出生前診断、尊厳死、脳死移植、医療ミスを防ぐ方法、医師不足を改善する方法など特定のテーマが与えられ、その是非を討論します。
医学部受験としては定番の内容です。
医師にふさわしい中庸な思想を持っているかどうかを同時にチェックされているので、どんな話題に対しても過激な発言は控えましょう。
高齢化社会の課題、いじめ問題の解決法、ネット社会のメリットとデメリット、国際社会における日本の役割等、社会問題に関係する事柄がテーマとなります。
議論についていくためには、日頃からニュースをチェックすることを習慣化しておく必要があるでしょう。
集団ならではの側面から評価が行われる集団面接・集団討論。
最も厳しく見られるのは協調性ですが、その他にもいくつかポイントがあります。
個人面接とそれほど違いがない集団面接でも、周りと比較されるという点には注意しておかなくてはなりません。
医学系のテーマについて考えを問われる場合、特に医学への興味関心が評価されています。
医学の世界は常に進歩していますので、一人前の医師となった後も絶え間なく新しい情報を吸収し続けなくてはなりません。
世間で話題となっている基本的な医学の知識が不足していたり、自分自身の意見を話せなかったりすると、「この人はヤル気がないので情報収集をしていない」「本気で医師を目指していないので自分の考えがない」と見られてしまうでしょう。
特に集団討論では、限られた時間内に有意義に議論を発展させていかなくてはなりません。
その際に評価されるのが段取りをする力です。
討論とは、全体の時間配分をし、課題を分析し、解決手段を考え、アイディアをまとめて結論を出すという高度な営みです。
やるべきことに優先順位を付け、着実にこなしていくという姿勢を見せましょう。
集団面接・集団討論ともに、テーマについて自分なりに現状把握する、問題点を見出す、対応策を出す、結論を出すといった論理的な思考能力が審査されています。
感情論で思考停止せず、どういった課題があり、将来にどんな影響を及ぼすのか、解決策はあるのかなど、論理的に考えて発言し、議論に深みを持たせるようにしましょう。
集団面接・集団討論の双方で、自分の意見を他者に理解しやすい形で簡潔に発信する能力が評価されます。
加えて集団討論では、自分の意見にこだわりすぎず他の受験生の意見に耳を傾ける、グループ全体で話題を理解し問題点を共有する、結論に向かって議論を深め合っていくという集団の中でのコミュニケーション能力が問われます。
集団面接と集団討論は、形式や問われる内容こそ異なりますが、対策方法には大きな違いはありません。
いくつかのポイントに前もって注意しておけば、どんな形式の試験に出会っても焦らず対処できるはずです。
集団面接・集団討論の双方で最も大きなポイントとなるのは、話を短くまとめることです。
自分を良く見せようとして必死に長々と話してしまう受験生は多いですが、複数人で限られた時間を分け合っている集団面接・集団討論では、ダラダラした長話は「協調性がなく自己中心的」、「考えにまとまりがない」と取られてしまいます。
発言する前に発言内容をまとめておき、細かい部分は省略して「私は○○だと思います(結論)。なぜなら~だからです(その根拠)。」の順で簡潔に話すようにしましょう。
1回の発言は長くても1分~1分半を限度とし、早口すぎず、ダラダラしすぎない適度なペースで話すことを心がけてください。
集団討論では、メンバー全員がライバルであると同時に共存関係にあります。
自分自身がコミュニケーション能力に秀でていても、暴走して場違いな発言をする人・沈黙して討論に参加しようとしない人がいて討論がうまくいかなければ、最悪の場合グループ全員が不合格となることもあるのです。
暴走する人には「話がズレていませんか?」と注意喚起したり、沈黙する人には「○○さんはどう思いますか?」などと他のメンバーがフォローしたりすることで、グループ全員が気持ちよく討論に参加できる雰囲気が生まれ、最終的に有意義な結論につながっていきます。
集団討論はあくまで全員が協調して議論する場なので、「議論に勝つ」ことが評価されるわけではありません。
議論を盛り上げる建設的な内容で冷静に反論するのはもちろん良いのですが、誰かを言い負かそうとして感情的に反論する、自分の意見を全体に押し付け、他人の意見を聞き入れないといった態度は厳禁です。
医学生として、医師として集団の中で適切に振る舞うことができない人物と判断され、不合格対象となってしまいます。
グループ全体のバランスや雰囲気を尊重し、過度の自己主張は控えましょう。
集団討論で課題となるテーマは、さまざまな考え方があって満場一致で結論を出すことが難しい内容のものです。
そのため、個々の発言は単に正解・不正解といった観点からではなく、議論に深みを持たせることに貢献しているかどうかといった観点から評価されます。
発言の際は「今の自分はどう考えているか」を整理してわかりやすく意見することが大切です。
複数の異なる意見が出たら、全員で悩みながらそれぞれの意見の良し悪しを議論し、何が最良策かを考えていくという姿勢を見せましょう。
多数の意見がぶつかり合って、より良い結論となっていくような実りある議論ができれば高評価となるでしょう。
司会は自分自身の意見もしっかりと述べながら、他のメンバーの意見を比較したりまとめたりして、全体を見ながら議論を回し結論につなげていくという高度な役柄です。
うまくこなせれば当然高く評価されますが、力不足で失敗してしまった場合は評価が悪くなり、さらにメンバー全員にも迷惑がかかります。
委員会活動や部活動の中で司会の経験がある場合、模擬討論で司会をやってみて手応えを感じた場合は本番で司会にチャレンジしてみるのも良いですが、自信がない場合はやめておきましょう。
司会にならなくとも、書記・タイムキーパーなどの役割で存在感を発揮することは十分可能です。
集団面接・集団討論で良い結果を残すには、コツを覚えておくことはもちろんですが、実際に模擬集団面接・模擬討論を経験して慣れておくことが一番肝心。
医学部受験者がそれほど多くない高校では対策が不十分になることが多いため、医学部予備校の対策講座で経験を積むのがベストです。
医学部予備校なら時事問題や医療テーマについての情報収集も効率的に行えるため、自学自習で対策するよりも格段に力が付くことでしょう。